法務局の自筆証書遺言保管制度は、自筆証書遺言のデメリットを補った安価で公的な制度になっています。
本記事では、相続・家族信託専門の司法書士が実際に利用した体験談を紹介します🦉
※自筆証書遺言保管制度の概要については、触れていません。
自筆証書遺言保管制度のおおまかな流れ
1 住民票などの必要書類、必要な情報を収集する
2 自筆証書遺言の作成
3 遺言書の保管を申請する遺言書保管所を決めて予約する
4 遺言書、必要書類を持参して法務局に申請に「行く」
かかった費用:4750円
内訳:収入印紙3900円
住民票350円
交通費500円
リアル体験談
1 住民票の取り寄せ、必要な情報の収集
別件で使う予定の住民票が手元にあったのでそれを代用しました。マイナンバーカードがあれば楽ちんです。
また、相続(遺贈)させる相手方の生年月日,受遺者,遺言執行者を指定するときは、その住所と生年月日の記載が必要なのでその情報収集をします。
書類と情報収集している間に、どんな内容の遺言にするか考えました。
内容はすぐに構成できたのですが、財産目録に記載する財産の棚卸に時間がかかりました。
2 自筆証書遺言の作成
(1)形式の確認
余白が決められているのでそれどおり便箋を自分で作成しました。
財産目録はPCで作成可能ですが、その署名部分で余白が侵害されないように注意してください。
私は、自作した書面を形式どおり作成したことで安心してしまい、署名するときはすっかり余白のことは忘れていましたが、ギリギリセーフでした。
(2)いざ、書かん
経験者は語る、です。
全文自署するのが思ってる以上に大変
間違えた場合の訂正方法もルールがあります。間違えた場合、ルール通り訂正するか書き直すかの選択を迫られます。
(訂正方法を間違えた場合に遺言がどうなるのかは省略します)
絶対間違えたくないと思って書きましたが、最後の最後で遺言執行者の続柄を間違えました(ショック)。あえて書き直しではなく訂正することにしました。
※法務局側も間違えた時は、書き直すことをおすすめしているようです。私も書き直すことをおすすめします。
ただ、法務局で形式のチェックをしてくれるこの訂正方法までチェックしてくれるのかもしれません。
※確認できたら更新します。
私は、何のこだわりもなかったのですが、キレイな字で残したいとかこだわりがある方、特にご高齢の方は相当大変になると思います。
🦉小休憩 A4サイズの便箋の用意はどうするか A4サイズの紙は普通の家にはないことがほとんどだと思います。 コンビニでA4サイズの便箋は売ってませんでした。私は、自分でA4サイズのコピー用紙に自作の便箋を用意しましたが、文房具屋さんかアマゾンで手配されてください。 |
(3)申請書の作成
遺言書そのものとは別に、自筆証書遺言保管制度の「申請書」を準備します。
PDF形式ですが、法務局に書式が公開されているので御覧ください。
3 遺言書の保管を申請する遺言書保管所を決めて予約する
スマホで予約しました。楽ちんです。
なお、自筆証書遺言保管制度は、弁護士と司法書士が皆様のサポートをすることが可能です。依頼される際は、サポートをしている弁護士・司法書士からの予約が可能です。
札幌法務局の自筆証書遺言保管制度は、なかなか繁盛しているようです。
アポなしでいっても対応してもらえない可能性が高いので予約は必ずしてください。
4 遺言書、必要書類と印鑑を持参して法務局に申請に「行く」
10分ほど窓口で担当の方が形式のチェック。法務局員さんへ本人確認書類の提示。
チェック後、収入印紙の用意を忘れていたので法務局内で3900円分購入。
その後、法務局内で再チェックするようで30分ほど待機。
待機後、「保管証」と注意事項を受領して終了。
私の場合、1時間以内で終わりましたが、書類の不備があると時間は長くなるだろうな、と感じました。
利用して感じたメリット
1 手軽
必要書類の住民票などはすぐに手配できて、手数料は収入印紙3900円で済みます。
公正証書遺言と比べてたらかなり手軽です。
2 保管される(紛失のおそれがない)
自筆証書遺言のデメリットを見事解消してくれました。
遺言書を自宅などで保管した場合を想像しましたが、なくしてしまう自信がある方のほうが多いのではないでしょうか。
3 相続人の他3名まで、自分の死後に遺言書が法務局に保管されていることの通知が出せること
遺言書の存在が埋もれてしまうことはなくなるので便利です。
ただし、これをメリットと感じるかデメリットと感じるかは人によって異なりそうです。
4 遺言書の検認がいらない
検認は、時間もコストもかかります。
自筆証書遺言のデメリットを見事解消してくれました。
5 遺言書の形式的なチェックは受けられる
自筆証書遺言を専門家に相談せずに自分で作成する場合、「押印がない」「署名がない」「日付が。。。。」など形式的なミスがどうしてもあり得ます。
そういった部分だけでも事前に防ぐことができるのはグッドです。
利用して感じたデメリット
1 法務局に行く必要がある
仮に弁護士と司法書士のサポートを受けたとしても、法務局員による本人確認があるので遺言書を書いた本人が法務局に行く必要があります。
意識ははっきりしているけれど、体が動かないとか、身体的な問題で法務局に行けない人は現状利用できません。
2 遺言書の「内容」のチェックは法務局ではできない
例えば、「全財産を妻に相続させる」などシンプルなものであれば、皆様だけで問題ないと思います。
複雑な内容の遺言の場合、遺言自体が無効になると保管しても無意味なので、そもそもどの方法で作成するのかから、専門家と相談しながら作成することをおすすめします。
まとめ
30代の私でも直筆で書くのは正直大変でした。
ただし、使い方を間違えなければ手軽でとても便利ですから、積極的に利用してみてください。
専門家によっては、次の理由などから否定的なコメントも一定数あります。
・意思能力の担保にはならない
・安心安全な公正証書遺言を利用したほうがいい
・内容の不備がある遺言書が量産されてあとあと揉めるかも
多種多様な意見はありますが、要は既存の制度をうまく利用できるかどうかです。
公正証書遺言や自筆証書遺言保管制度は、それぞれに得意不得意、メリット・デメリットがあります。自分に適した遺言書の選択からお気軽にご相談くださいませ。
札幌司法書士会所属
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