Q:相続人の一人が認知症です。相続財産は、預貯金のみです。他の専門家に相談したら後見制度を利用するほかないと言われました。どうしたらよいですか?
認知症になってしまったあとの相談は非常に多いです。
認知症になる前の対策をしていただくよう強くおすすめしていますが、認知症になってしまったあとの考えられる対策を考えていきましょう。
ご提案:現状で遺産分割をするには後見制度の利用が必要ですが、すぐに遺産分割をする必要がない場合は、認知症の方がお亡くなりになったあとに遺産分割をされたらどうでしょうか?
後見制度は、大事な制度で、セーフティネットとして必要な制度でありますが、認知症 = 杓子定規に後見制度利用と結論づけるのは、ある意味思考停止です。
後見制度を利用して、仮に弁護士、司法書士などの専門職後見人が選任された場合、年間約30~70万円ほどの専門職後見報酬が発生します。
仮に5年間、後見制度を利用した場合の後見報酬はいくらでしょうか?
約150万~350万円也
認知症になられた方がご高齢、他の相続人の方はまだまだ現役世代、相続財産は相続税非課税内、その預貯金をすぐに分割しなくても特別問題ないというご状況であったので、「何もしない」というご提案をしました。
※相続人の年齢構成、生活状況によっては、何もしないことがリスクになる場合がありますので相続の専門家と慎重に検討することをおすすめします。
~以下、解説~
預貯金の相続手続に期限はありません!
相続登記や相続税申告とは異なり、
将来、相続人が増えたり、休眠口座となったあとの手続が多少面倒になることはあっても、いつまでにやらなければいけないということはありません。
預貯金は時効でなくなっちゃうときいたけどホント?
金融機関への預貯金請求権は5年で消滅することになります。
ただし、金融機関が時効を主張(援用)することはほとんどありません。
確かに、5年で時効で消滅してしまいそうですが、期間の経過とともに当然に受け取れなくなることはありません。
金融機関側が、「この預貯金は時効なので引き出しできません。社会のためにありがたく使わせてもらいます」と「時効の援用」をしない限り、預貯金を請求する権利が消滅することはありません。
故人の預貯金を時効援用してくる金融機関に預けたいとは思わないですよね。
ちなみに、10年以上取引がない預金は、毎年1200億円!程度発生していると公表されています。
休眠口座化する可能性はあります
とはいえ、あまりに長い期間放置していると、その口座が休眠口座に移る可能性があります。
なお、おおよそ10年間まったくその口座を使用していなかった場合に休眠口座化することが多いようです。
休眠口座化すると、通常の相続手続よりも時間がかかることがありますが、現状では問題なく相続手続可能です。
※休眠口座の手続の場合は、金融機関へ別途費用が発生することがあります。
豆知識~休眠口座って何?休眠預金になるとどうなるの?~
10年間、取引などがなく休眠口座となったお金は、預金保険機構に移管されます。
そのお金は、子供や若者支援、生活困難者支援、地域活性化等支援の3分野においてNPO法人などの公益活動に活用されます。
休眠口座化すると、通常の相続手続よりも時間がかかることがありますが、現状では問題なく相続手続可能です。
まとめ
休眠口座化してしまうことだけでみれば、なんのメリットもありません。
ただし、今回のご相談者様の場合、相続人の御年齢やご状況、後見制度のコスト、相続人ご家族のお気持ち面からすると、時効の心配も現実問題しなくていいだろうということを相続人間で確認し、後見制度を利用せず、あえて「何もしない」という選択をとられました。
現状の後見制度では、あくまでも最後のセーフティーネットとして利用することがご家族の総意に沿うことが多いように感じられます。
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